練習生原稿11「個人DEF(ディフェンス)の考え方とヘルプDEF」 Sugi Academy R1.7.24
ヘルプに行けとよく叱られるけど、そうすると自分のマークが空いちゃって、やられたりすること多い。そしてまた叱られる。いったいどうすればいいのかねえ。
上のような質問は結構ある。親子で戸惑ってる家は、この原稿でかなり解決するだろう。まず、DEFの大原則から話し、個々の用語(一つずつの言葉)説明と技術のポイントに触れるとしよう。バスケットボールというスポーツが始まって、約130年。初期のDEFと現在のDEFには大きな違いがあり、現在はやり方の種類も多い。それら全ての説明を少しのページでするのは無理なので、抜粋して述べよう。小学生向けに書いた内容なので易しめだが、後から書き加えた内容は高度な部分もあり、中学生にも十分役立つだろう。ただし、後半のヘルプDEFについて、細かなポジション移動は記述してない。それは別記事を参考にしてほしい。
マンツーマンDEFだから、人が人にくっついて守る。それゆえ、DEFはOFF(オフェンス)のすぐそばにいるのが普通だ。でも、「そば」ならどこでもいいかといえば、それは違う。○印がOFFであり、人の名前をA・B・C・D・Eと呼ぶことにする。A~Eそれぞれとゴールを直線でつなごう。そして、DEFは自分の相手と1mくら いの距離で、水色のラインをまたいで守るのだ。「そばにいればどこでもいい」と思ってる人、けっこう多いよね。なぜ、その位置かというと、ゴールへ向かうOFFは最短距離で走ろうとするから、それをさせないためだ。遠回りせざるをえないだろう。少しでも OFFに苦労させるってことだ。これをインラインマンツーマンと いう。「内側を守る」最も基本的マンツーだ。左下図で、B・E・DのDEF3人はほぼ正しい位置にいるが、A・CのDEFはラインからずれてるので間違いである(特殊な守り方を除く)。ただ、後半に出てくる応用的なDEFでは、この約束どおりにならない。それは別の約束を決めて、より効果の高い守り方を目指しているからである。しかし、マンツーマンの基本は、左下図で説明したものであり、これこそが、DEFの原点だということは、絶対忘れてはならない。このインラインDEFを実行する際に、重要なことがさらに2つある。それは、位置の移動とフットワーク。
1個目のポイントはDEFのいる位置(ポジショニング)だったね。2つ目は右上図のように、DEF位置がどんどん変化するという事実だよ。これ、とっても大事さ。そして、3つ目は……。
右上図○位置にA がいたとしよう。最初は、水色の線をまたいでDEFすればいい。しかし、Aが○の位置に移動すれば、ゴールライン(OFFとゴールを結んだ線)は、青線のように変わる。この瞬間正しいDEF位置は×である。ゴールラインは一気に5mとか動くわけじゃない。OFFの動きに合わせて少しずつ位置が変わっていく。時には戻ったりもする。これを正しく理解し、常にDEFポジションを修正出来る(直せる)ようにならねばダメだ。こういう動きがわからず、うまく出来ない選手は、中学生にも多いなあ。
1つ目2つ目がしっかり身についても、すぐにいいDEFをやれるわけではない。2つの約束を守ろうとしても、実際にOFFの動きについて行けるフットワーク(足の動き)が出来るとは限らない。DEFのフットワーク詳細説明は今回省くが、中心となる「スライドステップ」には十分磨きをかけてほしい。 *過去、これを最大限まで伸ばし何人ものOFFモンスターを封じてきた。 多くのチームがこういう練習を殆どやらない。つまり、マンツーマンの原則を覚えずに、すぐヘルプやディナイ、ときにはトラップの練習に走る。だから、正しいDEFの認識が出来るはずがない。ゾーン規定違反が取り入れられ既に8年(この文章はR6.8.3に加筆)ゲームを観戦すると、いまだにコミッショナーから注意を受けてるチームが多くある。「マンツーマンDEFの指導が出来てない証拠」なのだ。世界水準に追いつくことを標榜し、取り入れられたルール。だが、JBAだけがやきもきしても、現場の指導者が動かねば、「絵に描いた餅」なのである。スクール生にもどれほど注意しただろう。自分のマーク責任をほったらかしてヘルプばかりに行く、オフボールDEFではすぐにルックアウェイになる、これを本末転倒という。スクール生はだいぶ直ってきたが、十分ではない。世間に目をやればさらに悲惨な光景が……。
最後に、ヘルプマンツーマンDEF(この言葉は私が便宜的に使っている。ヘルプを活用したマンツ-と言う意味)の要旨を説明しよう。インラインマンツーは基本だが、得点出来るのは「ボールマン(ボールを持ってる人)だけ」という確かな真実がある。そうならば、ボールを持たない人は離して守り、ボールマンをよりがっちり守れば失点しにくいともいえる。そんな考え方から生まれたDEFだ。次にポジショニングを示す。インラインDEFと比べてみよう。
*緑色の○がボールマン。3つの例を出したが、ボールの位置でかなりポジショニングが変わる
相手OFFの特徴によっても、幾らかポジションは変更されるので、これで絶対というものは無いが、ボールマンにはワンアームの距離、ボールから遠くのOFFほど離して守るというのが、大原則だ。ある程度ボールに寄っていなければ、ヘルプ出来ないからである。ボール隣のOFFにつく人は、ヘルプだけでなく、パスをさせない意識がかなり重要だ。パスラインに手が届きそうな位置取りしてるのがわかるかな?遠くにいるDEFほど、ヘルプの責任が重い。(ボールマンDEF以外は、平たい三角形を作って、その頂点にいることにも注意)小学生用に簡素化して説明した。それでもかなり難しいだろう。インラインDEFに比べると、ポジショニングの約束が曖昧(はっきりしない)なので、最初の位置だけでなく、ボール移動後の位置取りはさらに難しい。だから、まずは、1:1のDEFをしっかり練習し、インラインマンツーを徹底して身につけるのが先決。ヘルプDEFを簡単に考えすぎてる人、多いなあ。
ヘルプDEFは必要だけど、マンツーマンの最優先は自分のマークマンを守ること。それをほっておいて、ヘルプに執心するのはおかしいぞ。このままだとほぼ確実に得点されるから、自分のマークを捨ててでも行かねばならない、そんな場面も時にはあるけどね。「何でもかんでもヘルプ」じゃあない。イメージとしては、自分のマーク7割、ヘルプ3割くらいで考えてみよう。この割合も易しくはない。だから、まず、インラインマンツー中心のストリクトDEFを鍛え上げ、DEFの感覚を磨くのが優先。それが足りないね。基盤になることを半端にしたまま次に進むと、頭が混乱し、成果どころかミスばっかり目立つようになっちゃうぞ。
ボールマンの隣にいるDEFが、マークマンに接近して手を伸ばし、パスをしにくいように守ってるチームがありました。当然、ボールマンのDEFとは間が空いちゃって、ヘルプしにくそうだったんですが、あれは何なんですか?
あれはねえ、ディナイDEFというんだ。まさにパスを受けさせないことを狙いとしてる。専門用語では、ボールマンDEFを1線、その隣を守るDEFを2線と呼ぶ。2線のDEFはディナイで守るという考え方のコーチは、かなり多いと思うよ。むしろ、そちら派が主流だろうけど、ボールマンにやられて抜かれる危険、レシーバーへの付き方の難しさ(スタンス維持やフットワークができない)、視野の問題(クローズドスタンスの意義を理解してない)、ヘルプとの区別など、いろんな意味で多くの小中生には向いてないと私は思う(不可能という意味じゃないが)。でも、簡単にパスさばかれると、ウイングからの多彩な攻撃を許すことになる。そのように長短を考慮して、私はヘルプマンツーマンDEF(このように呼んでいる)を長く使ってきたのさ。
R3.8.15配信「個&チームDEFの考え方」には、Olympicベルギー戦を元に解説した「ヘルプマンツーマンDEF」が詳しく説明されてる。 https://saschool-blog.com/?p=1733 興味ある方は見ていただいて何ら問題ないが、練習そのものは、ミニバスでは、かなりレベルが上がらない限り不必要かなと思う。正しい言い方をするなら、覚えるのが困難というべきか。だからまずは、1:1重視のDEF練習をたくさんしてほしい。当然、カットインなども止めることができるように。それらの繰り返しの中で、自ずとヘルプの必要性なども理解してくる。優先すべき物事を間違えてはダメ。ストリクトマンツーマンDEFを是非……。 育成年代のストリクトDEF https://saschool-blog.com/?p=879
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