練習生原稿86「ボールマンDEFのスタンスを考える」 Sugi Academy R4.2.25
ボールマンDEFの原則は、インラインマンツーマンでワンアームの距離。これをずっと言い続けてきた。その内容を忘れたあるいは未読の人は、必ず、3.1.6配信「ミニバスのDEFポイント」や3.8.15配信「個&チームDEFの考え方ーOlympic ベルギー戦」を先だって読むこと。
ミニバスのDEF https://saschool-blog.com/?p=648 Olympic ベルギー戦 https://saschool-blog.com/?p=1733 *この2つは、解説の詳しさが違う。また、今回の原稿に深い関わりを持つのが「世界目線のストリクトDEF」是非、何回も読み直してほしい。https://saschool-blog.com/?p=879
マンツーマンで守るとき、抜かれるのは誰でも怖い。だから、一気に抜かれにくいように、少し距離を空けて守る人が多い。確かにOFFとの距離を詰めれば抜かれるリスクは高くなる。OFFがさほど上手くないうちは、それで通用する。でも、シュート力の高い人やパスの上手い人が相手だと、OFFの望むような展開そのものになってしまう。OFFに好き勝手やらせないためには、距離を詰めてプレッシャーをかけ続けねばならないのだ。どうもこの辺をよく理解してない選手が多すぎる。DEFの質が上がらねば、チーム内での1:1 OFF力も伸びない。ヘボが相手ならたいした技術じゃなくても勝てるからだ。結果として、チームが強くなることはない。まずは、この普遍の真理をわかってほしい。疲れるんだよなあなんて、泣き言いわずにね。
今日の本論に入る前、DEFのスタイルについて説明しておこう。あくまで個人DEFの範囲だ。しかし、それらがチームDEFのベースにもなるため、チームスタイル関連の話題も無視は出来ない。まあ、別の機会にSpot解説することになるだろうね。
コーチが以前話してた、ファンDEFとかファネルDEFっていうのですか?ノーミドルとかノーベースなんて呼び方もあるらしいですね。子どもが言ってました。
そうだよ。守り方の個人技術だけど、チームとしてシステムをきちんと作らないと、それだけやっても余り意味がないんだ。だから、チームDEFの話を避けられない。はっきり言うと、チームDEFまで取り上げたくないんだよね。でも、またいつか……。さて、肝心な内容に入ろう。私がよく口にする「ストリクトマンツーマンDEF」その詳細だ。まずは、第2段落で述べたボールマンとの距離。ワンアームで付き、腕を使ってボールをトレースしプレッシャーをかける、これをタイトDEFという。少し離して付くのがルーズDEFだ。体力消耗を避けるなどの利点もあるが、鍛えるべきことを間違ってはいかん。それに、ルーズDEFはゾーン規定に引っかかる可能性が高い。次は、ボールマンに対するDEFの左右の位置、真正面で捉えるのがインラインマンツーマンだ。そして3つめは、スクリーンに対する守り方。極力スイッチせず、スライドやファイトオーバーで追っかけ続けるDEF。その反対がスイッチングDEF、原則すべてのスクリーンへスイッチで対応する……。これら青字にした3つを使って守る、それがストリクトDEF。指導者により見解は様々だろう。だが私は、どこの誰が何といおうと、ストリクトこそが育成年代の世界目線と確信してる。高校生ですら不十分な選手が多い。世界と比べるならば、トップチームでさえ……。是非、そんな理解の上、本論を読み進めてほしい。
ストリクトDEFは主にボールマンDEFと思ってたけど、カッティングやスクリーニングに対しても、たくさん練習するんだってさ。それが大きな成果になるらしい。
今日はDEFの守り方について深く考えてみる。3.8.15配信ブログ内の1つ目の図「間違いは、誰?」を見てほしい。「ボールマンAについてるDEF」だ。インラインDEFではない。少しばかり左側(DEFから見て)に寄っている。こうすることで、OFFは右抜きをやりにくい。余り得意じゃない左ドリブルを使わざるをえなくなる。DEFにしても、ほぼ自分の右側だけに注意すればよいので、随分気が楽になる。ここで、どのくらい左寄りにすればいいのかだが、2つ方法がある。身体半分だけ寄る、身体1個分寄るだ。昔ながらには、これをハーフオーバーシフト、フルオーバーシフトという。寄り幅の違いだけだが、もっと分かりやすくするためには、ドリブル予定のボール位置に自分の身体正面を持ってくる。それで、この守り方を「ボールフロント」と私は呼んでいる。感覚的にはハーフオーバーシフトである。本例では、左にシフトしてるが、右にシフトすることも当然ある。スタンスの足位置は、シフトした側の足が前、内側の足が下がるようになればOKだ。
このDEFは、ドリブル方向を限定させて、DEF有利にするのが目的。上級者や熟練指導者は、知っているだろうが、「初めて知った」という方も多かろう。一定の成果は期待でき、相手のスキル次第では絶大な効果が出る場合もあるため、このDEFを1:1 DEFのベースとして使うケースは結構多い。「だが…」だ。私は長い指導歴の中で、これをやらせたことはほとんどない。なぜかって? インラインこそがあらゆるDEFの基盤であり、小中生の時期は、それこそを徹底して鍛えるべきという強い信念があるからだ。他稿の中で随分インライン重視を訴えてきたが、私の思いはさほどに強い。半端ないといえよう。これでもかというほど鍛えまくって、やっと満足いく結果が出てくるのである。何回となく私のチームと闘った方は、言わんとしてる真の意味を理解いただけよう。
外国の上位チームと闘った全日本男子選手の反省に、「OFFスキル」「DEF力の違い」「身体の強さ」が大きく取り上げられていた。世界のトップに上るには全てに足りてないだろう。身体の強さを本格的に望むのは、小中生には難がある。しかし、OFFもDEFもやれるものだ。そして、第2段落の青塗りつぶし部分に書いたとおり、DEFが伸びねばOFFも本当には伸びない。
インラインDEFでは、左右いずれもフィフティフィフティ。OFFの仕掛け次第で、どちらをもきちんと止めねばならない。敢えてそのような状況に身を置き、反応を鋭敏にするべくトレーニングする。それほどの困難を跳ね返すことで、納得のDEF力が得られる。数ヶ月で叶うものじゃない、粘り強い着実なドリルあってこそ実現する。
身体能力に恵まれると、特に勘違いが起きやすい。自分はDEFが上手いのだと……。以前、転任したばかりのチームに、学校でピカイチの身体能力、OFFの上手い生徒が2人いた。もちろん、能力があるので、DEFもそこそこ出来てしまう。私は彼らに「DEFを何度か注意した」が、どうも彼らはピンとこないようだった。その彼らが、強豪高校に進学、半年くらいして中学にやってきた。そして彼らの口から出た言葉「ぼくたちはOFF 8、DEF 2くらいでした」切磋琢磨(互いの技術を磨き高め合うこと)するメンバーに入って練習し、やっと自分たちのDEF力不足に気づいたのだ。まあ、気づいたのでよかったんだけど、少し遅すぎ。彼らが小学生頃から意識して練習していたら、遥かに上級プレイヤーとなっていたろう。何とももったいない話。指導者・選手・保護者すべてが、こうした事実をしっかり受け止め、考え直したい。
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