練習生原稿66「上達を支える3つのスタンス」 Sugi Academy R3.2.15
スポーツ上達の根源は、身体的能力&精神的能力(原稿17、2.16ブログ)。そしてバスケスキル上達の始まりは、ボディコントロール(原稿6、12.6ブログ)。その基盤となるのが、今から紹介する「3つのスタンス」だ。生徒の協力を得て、綺麗にまとまったぞ。最重要ファンダともいうべきもの、決して侮るなかれ。 ボディコントロール https://saschool-blog.com/?p=437
バスケがいかに激しい動きを伴うスポーツといえど、ずっと動き続けっぱなしではない。じっと止まったまま山のごとく動かない。静止状態から機を窺い、一気に加速し攻め立てる。スピードを急に減速してピタッと止まる。特に、OFFにおける動きの変化として、重要なパターンである。
戦国時代の武将、武田信玄の旗印に「風林火山」という4文字がある。意味は、「疾(はや)きこと風の如(ごと)く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し」。それを短く熟語にまとめている。原稿49で紹介した孫子の兵法書が出典であり、2500年も前の戦いの奥義が、現代バスケのOFFにそのまま通用するのだから、感動的ですらある。
さて、具体的にこの3つのスタンス(ポジションともいい、私はこっちをよく使う)の説明に入ろう。
①パワーポジション ②スタッガードポジション ③ストップポジション である。
まずは、下の写真を見てほしい。各ポジションにおける足の位置と幅・膝の曲がり・上半身の角度などが、全体的に捉えられるだろう。これが基本となる姿勢なので、何回もまねしてしっかり身につけることが優先だ。形を覚えたら、それぞれのスタンスにおけるポイントを実行する。相手DEFを目の前にして、ゲーム中に力を発揮できねばならない。「本当に定着する」まで、何十回も繰り返し練習だ。注意点も後述するので、熟読・暗記すること。
パワーポジションの解説
①が正面から見た基本姿勢であり、②が横から見たものだ。②は身体がかなり前に倒れてるよう見えるが、実際は床とほぼ垂直である(実は、写真全体が傾いてる)。ただし、股関節、膝、足首の3関節をしっかり曲げねばならない。よくある間違いは、股関節が曲がらず上体が起き上がり、膝だけが前方に出ていってしまうケース。あるいは、股関節を曲げるんじゃなく、腹がへこみ腰や背中が丸まってしまうパターンだ。背筋は伸ばし、尻を落とすイメージ。背筋とスネが概ね平行になる。姿勢が悪いと、尻やハムストリングの力をうまく使えず、膝や腰に負担がかかり怪我のリスクも高まるだろう。③はビハインド(背中)からDEFが押しているところ。しっかりこらえ安定してるのがわかる(多少踏ん張って押し返してる)。ポストプレイでは、パワー勝負に勝つことが重要。そのため、このようなドリルをしてパワーを出せるよう鍛えるのだ。パワーバトルは、CやPFだけの物ではない。PGだってDEFと競り合うことはある。簡単に飛ばされるようならミス連発だ。また、OFFではなくDEFの基本姿勢として絶対的に重要だし、ルーズボールやRebにおいても、当たり負けしない力を生むために有益(結果ケガもしにくい)である。正しいパワーポジションをつくり(初心者のうちから意識する)、パワードリルをやってほしい(特に、中学生以上。高学年も可)。
上半身と下半身をつなぐ体幹部分を鍛えないと、十分なパワーを出せないわね。でも、常にパワーポジションをしっかり意識してれば、力の入れ方などは上手くなる。体幹が固まれば、上半身と下半身のパワー伝達もスムーズになり、シュート・ドリブル・パス・DEFあらゆるスキルにプラスとなるわよ。
④はDEFがローサイドに付いた場合である。OFFは左体側を押しつけて頑張ってるが、DEFの腕がパスラインにかかっておりカットされそうだ。それに対し、⑤ではOFFが明らかに場所取りで勝利している。左足がDEF右足にかかり、DEFが前に出られない。これをファイトオーバーステップという。長いので、私は「ファイトステップ」と省略して呼んでいる。このステップは、パワーバトルでは不可欠の技術(スクリーンプレイを外すのにも使う)だ。ターゲットハンド(伸ばした右手、目標となる)を作ったのもパスしやすい。あとはOFFのアームワークで、DEFの左手を、下に押さえ込むか上に跳ね上げるかすれば、最高である。
⑥ではローサイドをDEFにほぼ押さえられている。このままパスを入れるのは難しい。この状況を変えてOFFのレシーブを可能にする方法は何通りかあるが、⑦のように、まずファイトステップを身につけよう。
⑧⑨は、相手DEFが非常にパワフルで、OFFが苦戦している。(もちろんこれはファウルだが、承知して練習してる)⑧は何とか踏ん張ってるが、上半身がやや前傾し押され負け、⑨ではこらえきれず足が1歩前に出た。視線が下を向くと視野が狭くなり、パスキャッチにも影響する。身体全体が縮んで小さくなるから、相手に脅威を与えることもできない。ポストマンは「ワイドボディ」といって、身体をでかく見せる技が必要である。だからこそ、パワーポジションをしっかり作って場所を確保し、腕を広げて空間を捕らえるのだ。そしてさらに、自分の身体(特に背中)をDEFに密着させて、DEFの動きを極小まで押さえる。隙間が空くと、DEFが自由に移動しやすいのである。このテクニックは「シール」と呼ばれ、安全にパスを入れる大きな条件となる。
前述したように、パワープレイはインサイドプレイヤーのみならず、全員に必要な技術。高校生くらいでよく見られる「前十字靱帯断裂」の予防にも役立つ。いろんな形でパワードリルを実施すべきだ。ただし、中学生(早くて高学年)からでいい。小学校中学年でも当たり負けない力は必要だが、パワードリルそのものじゃなくても練習はできる。それに優先してやるべき事が他にたくさんあるからだ。ただし、パワーポジションの意識は、ミニバスでも大切にしたい。
このようなファンダメンタルの上に、原稿20に書いた「複数のターンアラウンドシュート」が乗っかっている。スキルの流れは、本当に太い線で繋がっていると実感できるだろう。興味深いものである。 ポストOFF 最終部分 https://saschool-blog.com/?p=840
スタッガードポジションの解説
ボールホールドから1:1を行う際に極めて重要なスタンスだ。一気に加速するには、重心をやや前に移動し準備せねばならない。①を見よう。体重のかかり方が、前に7・後ろに3くらいの比率となってる。そして、後ろ足の踵が浮いてるだろう。トリガーステップといい、すぐに蹴り出せる状態である。(トリガーとは銃の引き金)ボールのホールド位置も気をつけたい。写真では、ポケットで保持しているが、DEFのプレッシャーがきつくなければ、もう少しボールを前に出す。ドリブルが速くなる。小中生の多くは、ボールを持ち相手と向かい合ったとき、このポジションを取れず、ぼったっている。相手を抜こうという気持ちの強さが感じられず、当然DEFに脅威を与えることなどできない。聞き慣れない用語だろうが、抜くためには確実に身につけたいスキルだ。
ストップポジションの解説
S.A.ドライブ「瞬間抜き」を実施する上で、欠かすことのできない技術。上半身は垂直近くに保ち、後ろ足の膝を深く下げる(床から15cmくらい)。スタッガードほど前に傾かないのは、ドリブルを1回完全に止めてDEFも静止させ、ほんの一瞬ズレを生み出すための優位性である。そこでドリブルチェンジでクロスを狙う。DEFの対応次第では、リターンドライブ(チェンジと見せかけてやめるドリブル)でストレートに狙いを戻すため、進行方向へも進みやすいことが大切だ。
①を見てほしい。これは止まった瞬間の写真だが、この前の段階で、白線上を2mくらいまっすぐドリブルしてきている。そして最後の一歩で、ラインに対し、約30度右へ踏み込んで止まる。(左ドリブルなら左へ30度)
ドリブル直進から、30度踏み込んで(DEFを押し込むという)、ピタッと止まりストップポジションを作る。OFFの重大事「緩急をつける」の規範であり、S.A.「瞬間抜き」における土台となる極意の1でもある。(チェンジがレッグやビハインドの場合、ストップ瞬間にボールの引きが入る。原稿56参照) 写真生徒の姿勢等は大変よい。ただ、これはフロントチェンジによる瞬間抜きのケースなので、②ではボール位置が高すぎる。低く強く突くのも重点項目であり、それらを含むボール位置や移動法が極意の2になる。 *彼は、実際のチェンジでは正しいボール位置で実施できる。名誉のため付け加えておく。
極意3は、実際のドリブルチェンジ方法。手の形・向き・弾き方・ボールを落とす位置などだ。そして、極意4が、逆足の踏み込みタイミングとコース取りである。ストップポジションと関連し、「S.A.ドライブ」の極意概要を付加説明した。参考にしてほしい。 ドライブの極意まとめ https://saschool-blog.com/?p=1616
正面から見て、膝から下部分を床に対して垂直にする。そうして適度に曲げればケガを回避しやすいと覚えておこう。ストップでもRebでもね。3つのスタンスは、スキル以外にも大きな意味を持つぞ。
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