練習生原稿115「Wチームトラップのかけ方」 Sugi Academy R5.5.10
ピンチとは、DEFが2人組になってボールへプレッシャーを掛け、奪おうというもの。Wチームというのが一般的だろう。プレスDEFにおいて多く見られるが、通常のマンツーマンの中でも、不意に使用されることはある。今回はDEFのかけ方の説明、破り方に関しては後に譲る。かけ方の特徴を知ることは強固なDEFに繋がるし、弱点の理解にもなろう。その2W1H(Whenいつ?Whereどこで?Howどのように?)を解説する。ただし、強烈なDEFだが、一旦外されると致命傷(命に関わる傷、大きな痛手)にもなりかねないことは承知しておこう。押さえておきたいポイントが4つある。
1、DEF2人の隊形 2、どこで掛けるか 3、いつ掛けるか 4、DEF残り3人との連携 だ。
図中では、●○ がOFF ○ がDEF である。
1について DEFの隊形
多くの人はあまり意識してないかもしれないが、かなり大切。DEF2人の距離にもよるが、2人がそれぞれに鉄の壁となり、2枚の壁を直角に閉じていくような感覚にしたい。右図参照。しかし、トラップの場所や走って追いかける場面などにより、多少のズレは出る。これからドリブラーを捕まえにいく時など、特に注意しよう。
2について 仕掛ける場所 OFFが逃げにくい場所でトラップするのが理想。それはライン際である。サイドライン・エンドラインが近ければ、ドリブラーは180度の範囲しか逃げ場がない。でもそこにはDEFが迫ってるから、結局行き場を失うんだ。ハーフコート中央なら後ろ側ががら空きだよね。コーナーは90度しかないので理想的。
バックパスルールありの中バスならセンターライン際もすごく効果的。
3について 仕掛ける時
オールコートプレスの場合には、それがマンツープレスであれゾーンプレス(高校生以上)であれ、多少長めの距離を追い込んでトラップすることは珍しくない。ただ、原則DEF1人は、ボールマンに詰めてプレッシャーを掛けてる状態でありたい。ボールマンがフリー状態へトラップに行ったら、見透かされてノーマークにパスさばかれる危険が高いんだ。ボールマンへのプレッシャーが強いほど、視野は狭くパスコースも厳しくなる。ときには、ドリブルを取られないことのみに注意が行き、結果として2人目DEFの接近に気づけない場合だってある。
プレスDEF以外でWチームするケースをもう少し説明しよう。
ア、ヘルプディフェンスからのトラップ
イ、Cプレイヤーにボールが入った時
ウ、P n R(ピック&ロール)でのスイッチアップトラップ。今流にはブリッツという。
そもそもトラップするには、DEF2人の間が近い方がやりやすい。マンツーでヘルプする時って、抜かれたDEFが諦めず追ってくることあるだろ。その場合にはDEF2人が近づくのでWチームのチャンスなんだ。CのDEFが頑張ってるとCはターンができない。そこでは、パッサーのDEFが下がってきて、Cの前方向からトラップする。ダブルダウンとも言うね。スイッチアップトラップは、ブログ「スクリーンに対処するDEF法 https://saschool-blog.com/?p=4902」の中で解説したが、かなり練習しないと上手く機能しないなあ。アイウ以外でも、ボールマンのスタンスが崩れた時、プアービジョン(視野が狭くなること。パス探しやドリブルに夢中など)の時なんか狙い目だよね。
4について 残ったDEFとの連携
残る3人は何すればいいのか?パスカットを狙うんだね。Wチームだけでボールがとれることも結構あるが、多少視野の広い選手は、パスをさばける。ボケッとしてたら、4:3でノーマークのOFFへパス通される。だから、3人で4人を守らなくちゃダメだ。その際大事なのが、DEFのアラインメント(配置)。ハーフコートDEF、オールコートDEFを問わず、右図のようにOFFとOFFの間にバランス良く立つ。よりパスされそうな位置へ、微妙にシフトするけどね。
参考 Wチーム破壊のドリブル https://saschool-blog.com/?p=5712
1つ大切なことを付け加えておこう。ゾーン規定違反に関する内容だ。上述した4番のケースを見てほしい。トラップに合わせて他の3人が場所を移動し、パスコースを狙っている。折角プレッシャー掛けるんだから、ついでにボールも取ってしまいたい、それは自然な思いだろう。DEF自体の考え方として、筋が通っている。だが、1つの問題は、この3人のパススティールのための移動が、早すぎてはいけないということ。もともと、5人全員がマンツーで守っていた上で(つまり、1:1が5組できてる)、トラップタイミングに合わせて、守備範囲を変化させる。これは構わない。だが、DEFの始まりから自分のマークではなく、パス狙いしやすいエリアに場所を取る(つまりマンツーじゃなく、エリアDEF)、それはゾーンプレスDEFの考え方である。プレスなのだが、マンツーじゃない。あくまでゾーンの応用発展の予測型DEFだ。マンツーマンプレスからのDEFポジション変化は、正規に認められるが、ミニ選手・中バス選手にこの違いをきっちり教えるのは、かなり骨が折れるだろう。だから、ゾーン規定違反のケースが多く見られるのは必然だ。
コーチはゾーンプレスとかやったことあるのですか?
妙な自慢になるけど、20代半ばにはやってたね。静岡県のミニバスでは多分初だったと思うよ。高校でもごく一部の強豪くらいしかやってなかった。走りの頃だった。基本形の2-2-1型中心に、3-1-1なんてのも結構使った。まあ、ごきぶりホイホイみたいにボールが取れるから、そりゃあ楽しいわな。もちろん、個人マンツーマンDEFに相当時間掛けた上での話だけどね、そこは絶対揺るがない。そしてもう一つ、うちのチームの本領は、フルコートコンビネーションプレスだった。これ、最強!! どこもマネできない。ブン爺本人にさえ、再現困難なDEFだ。
そんなコーチも、30代以降では殆どゾーンプレスやらなかったらしいわ。ベースはマンツーマンDEF、そして、ときおりのマンツープレス。でも、オールコートで使うのは随分減ったんですって。R6.3月春の練習会で、プレスダウンについて結構時間掛けて説明していただいたわね。具体例をいくつか混ぜて解説され、とてもわかりやすかった。「プレス破るのなんて簡~単」というコーチの言葉が印象的だったわ。
誤解を避けるため話しておこうか。マンツーマンDEFを鍛えあげた上でプレスを使用するなら、マンツープレスだろうがゾーンプレス、コンビネーションだろうが、相当な破壊力を持った武器となる。チームDEF戦術の核に据えることだって可能だ。でも現実は、単なる脅かしやごまかしでボールが取れてしまう、そんなことが結構起きる。それは、OFF技術の未熟に他ならない。S.A.中上級者のようなハンドラーには通用しないね。DEFが優れてると、考え違いしてないだろうか?「試合の勝ち負け」にこだわるのが悪いとはいわない。でも、目先利益にばかり囚われ、本質的な育成が阻害されるのは避けるべき事態である。ゾーン規定が設けられ、マンツーマン優先指導が導入された「本来の意義」、それを再考しよう。
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