バスケ配信  60点差、奇跡的逆転の陰に

練習生原稿104「チーム強化の手本」       Sugi Academy R5.1.9

長年チーム作りをしていると、いろんなタイプの生徒に出会う。ブログ「筆者指導歴」の中で紹介したミニバス2年目男子チーム。そこに在籍した生徒達に関し、キャプテンK君を中心に語ってみたい。

赴任したばかりの年、「ミニバスチームを作りたいのだけどどうですか?」という父兄からの誘い。もちろん、バスケやりたいと思ってたから、2つ返事でOK。早速メンバー集めや活動準備が始まった。しかし、実際に登録を済ませ練習が始まったのはかなり後で、一期生である6年生の活動は、僅か3~4ヶ月で終了。5年が皆無だったので、4年生が実質的二期生となった。物語はそこから始まる。当初から加入してたのは確か5人、遅れて2人が参加した(違ってたらお許しを)。中には肥満指導を受けてた生徒もおり、ごく平凡な身体能力のチームであった。ただKは違った。サイズは大きくないが、身体能力は学年トップで、大規模校に入れても目についただろう。そして何より好ましいと感じたのは、彼の練習への取り組みである。小学生とは思えないストイックさ(遊びや怠けなどの誘惑に負けず頑張れること)。コートダッシュを2往復やる。スピードがあるので1往復ですでに10mくらい2位を引き離してる。2往復目小学生には結構きつい。だから少し緩めたいと多くが思う。だがKは、その差を20m以上にするべくダッシュした。5年での野外活動キャンプ、3日を終えて帰校。そのまま体育館へ直行、練習への参加意志を示した。普通くたくたですぐ家に帰るものだけどねえ。万事ばんじがその調子なのだ。他の二期生達は、身体能力はともかく賢く真面目まじめな生徒ばかりであった。だから、物の道理はわかる。能力に増長ぞうちょうする(いい気になる)ことなく、真摯しんしな態度を見せるKの影響を受けないはずもない。決して何もかもできたわけではないが、バスケに必要な底力と自分なりの得意技を磨き、目に見える進化を遂げていった。むろん、Kは安定感のあるオールラウンダーとなった。プレイスタイルは派手ではない。極めてミスの少ない玄人受けするバスケをやる選手。スコアラーというより、チームをまとめゲームをコントロールできるPG、小学生には稀なタイプ
二期生男子チームの戦歴については、細かく覚えてるわけではない。しかし、1年で大きな飛躍ひやくを遂げたことは記憶に鮮烈せんれつだ。次を参照に。 指導歴紹介 https://saschool-blog.com/?p=138

ブンコーチ
ブンコーチ

忙しい中、私の無理な願いを聞き入れ、本人が投稿を寄せてくれた。彼の目から見たミニ・中バス現役時代の進化を感じ取ってほしい。本人寄稿きこう文は、以下のとおり。

小学生時代、友達と山を駆け回ったり、基地をつくったり、公園で遊ぶ毎日だった私でしたが、4 年生の時に「ミニバスをやらないか」と杉山先生にお誘いを受けたことがきっかけでバスケを始めました。それ以来、バスケットボールが生活の中心となり、人生の大半を捧げてきたと思います。小・中・高・大・社会人・指導者と経験してきましたが、今回自分が小学校・中学校時代に何を考え、何をしてきたのかを振り返ってみたいと思います。このことが、皆様のお役に立つかどうかはわかりませんが、こんな少年が過去にいたのだと流し読みしていただけたら幸いです。

バスケを始めた頃の最初の壁はドリブルとシュート。左右の手で同じようにボールを自由にコントロールできるようになりたい!シュートを正確に入れることができるようになりたい!誰よりも上手くなりたい!そのためにしたことは家での練習。レッグスルー連続 100 回できるまでドリブル練習したり、壁の印をリングに見立て 100 回当てるまでのシュート練習をしたりしました。家の中では寝転んで天井に向かってシュートタッチの練習をしたり、おもちゃのリングとボールでシュート練習をしました。自分で考えながら暇さえあれば練習していました。中学校 3 年間続けたことは、左手でお箸を扱ってご飯を食べること(母親からは注意された)と、座ったときの姿勢を常に良くすることです。年に1回しかテレビ放送されない全米大学選手権(NCAAトーナメント)を録画して、どんなドリブルをしているのか、どのようなシュートを打つのかなど繰り返し見ては、真似をする練習もしました

そして、小・中・高とキャプテンだった自分が最も考え続けたことは「チームが勝つために何ができるのか」でした。多くの得点を決めるためにアウトサイドからのプレーだけでなく、リングを背にしたインサイドプレーを練習したり、味方が点を取れるようなパスを意識したり、相手エースを抑えるディフェンスの仕方を工夫したり、チームメイトに声を掛けて士気を高めたりするなど自分で考えながら練習しました。

自分がやっていたことは特別なことではなく、バスケを愛する人ならば誰もがやっていることだと思います。これらの練習以外で自分のバスケットボール人生に素晴らしい影響を与えてくれたのは指導者の方々です。小・中・高・大と指導していただいたほとんどの先生方はバスケ未経験者でしたがバスケへの情熱があり、何よりプレーヤーファーストの考えで指導してくれました。指導者の持論をプレーヤーに押しつけることはなく、ポジションもこだわることがありませんでした。プレーヤーが考えながらバスケを楽しむことが出来たと思います。もしも指導者の言われたとおりにプレーするというバスケだったら、優秀な成績を収めたとしても、きっと自分で『考えるバスケ』をやめていたと思います。

コートの中で起こる出来事の全てを練習することはできません。バスケは攻防が激しく、360 度、高さとスピードがある中でプレーし続けます。判断の連続です。自分で判断してプレーする習慣が大切だと考えます。なりたい自分になるためには自分で考え、行動すること。このことを教えてくれたのが、小中学校時代に夢中になって練習したバスケットボールです。これからも、バスケを愛する子どもたちやバスケを通して成長する子どもたちの姿を見られることを楽しみにしています。

ブンコーチ
ブンコーチ

中学での指導でも、「よくここまで伸びたなあ」「本当に強くなった」と、驚くほど成長したチームは5~6回ある。それらを含めても、ミニバス二期生達の成長度合いは、異色であった。物事を学ぶには素直さが必要だ。いい加減な自己流は排除せねばならない。しかし、一方で、教わることに常に受け身でいたならば、十分なレベルアップも発展的スキルの定着も望めない思考を停止してはいけない。

彼は、静岡県代表として国体選手を4年務め、2回東海大会優勝、全国大会へ行っている。人の思いの強さと工夫がいかほどの成果をもたらすか、改めて考えさせられる事例だろう。「孫子の兵法」「1%の閃き」にも通じる内容。これを読んでくれた方々に、少しばかりの勇気を与えられたなら幸甚こうじんである。


     

コメント

タイトルとURLをコピーしました