練習生原稿72「トップチームのプレイ俯瞰」 Sugi Academy R3.6.26
全日本チームなど、現在トップクラスにある選手達。今日は、彼らのプレイに関する雑感だ。一月後のオリンピックに向け、一生懸命頑張ってる選手達をそしるつもりはない。だが、「いいものはいい」「改めるべきは改める」という視点で、プレイそのものの是非を語ってみたい。少し気が引ける部分もあるが、高き目標達成のためには、正しい現状把握は避けられない。そんなスタンスで、読んでほしい。
全日本女子バスケの世界ランキングは、10位前後。世界強豪国とも、かなり戦えている。他方、男子のランキングは40位前後。シングルプレイヤーへの道は遠い。しかし、ご存知のように、NBA選手を輩出できるまでになってきた。Bリーグの試合を見ても、目を引くプレイの数が相当多くなっている。外国人だけではない。日本人自体に昔とは違うオーラを感じるのだ。特に、若い人達の変化は見逃せない。TV番組は半分くらいしか見てないが、実際NICE PLAYもかなり見られた。だが、課題だって当然ある。先日視聴したばかり「全日本男子強化試合 イラン戦」でのプレイについて論じてみよう。
読み手の皆さんに理解しておいてほしいのは、これから語る選手達が、全国選りすぐりのメンバーだということ。最終選考こそまだながら、いずれ劣らぬアスリートだ。近隣で開催されてる一般的なゲームにでも出場すれば、全員ウルトラスーパースターなのである。目の前で彼らを見れば、凄さを実感する。しかしながら、上には上がある。対戦相手が格下なら何食わぬ顔でやれていたことが、同等もしくは格上には、簡単に通用しなくなるのだ。ときに、驚くべきミスも出る。4つほど指摘する。プレイヤー名は、仮にA,B,Cとしておこう。
①Aがドリブルを緩め、3点ライン外からローポめがけてヘッドパス。小映りだったし一瞬だったので、明瞭じゃないが、腕を大きめに振ったのだ。前にDEFがいたことも原因だろう。頭を越える、多少、距離とスピードの必要なパスだった。決して易しいパスではない。 案の定、パスはDEFの手に引っかかった。この場面「ヘッドパス」というパスの選択がベストだったかどうか考える余地はあるが、間違いとはいえない。それでも、スクール練習で指摘するように、ヘッドパスのキーポイントは、腕を振らずノーモーションで投げることなんだ。ファンダ要素を欠いたプレイでは、やはりミスとなりやすい。
②Bがドリブルでディビジョン(センターライン)を越えてきたが、DEFを抜ききれずプレイを迷っている場面。レシーブのために味方が3~4mの距離まで近づいた瞬間、Bはバウンドパスを出した。「えっ!」と思った直後、見事DEFがスティール、速攻で一巻の終わりだ。私流にいえば、あれはカットされて当たり前。市内の小中学生と変わらないようなパスである。全日本選考メンバーですら、固まるとあんなミスをするのだ。バウンドパスの功罪については、過去何回か話題にしている。 https://saschool-blog.com/?p=356
③セットOFF中に、Cがエルボー付近でドリブル。本人は様子見がてら仕掛けたのだろうが、およそドライブとは呼べない。そして抜けそうもないと察し、右斜め後ろ方向へ戻すパスを選択した。そんな気配を格上のイランが見逃すはずもない。綺麗にカットされ、これまた速攻の餌食。「スティールされやすいパターンなので気をつけろよ」と、昔、中学生にはよく指導した。
④スリーポイントが入らない。前半終えて、何と10の0。後半は盛り返したようで、10の5だった。1試合通せば25%の確率だ。私自身も経験があり、どんなに得意でも入らない日てのは確かにある。だが、それでもこのシュート率はいただけない。高さやパワーで劣りがちなアジアのチームには、精度の高いシュートがなおのこと望まれる。上を目指す以上、仕方がないと楽観視することはできないのだ。
いずれのケースも、随分考えさせられる。世界水準で十分な活躍ができるためには、日本男子バスケ界に求められるものは、まだまだ多いといえよう。トップを取りに行くなら、女子とて同様だ。育成年代から、こうした現状を知り、使命感を持って練習に励んでほしいと、つくづく思う。もちろん、巷の多くの指導者だって覚悟が必要だ。皆が課題を共有し、練習に創意を加える。そして、長い目で子達を見てスキルアップを図っていく。その先にこそ未来が開けてくると、私は考えている。
この試合では、NBAの八村や渡邊らは出ていなかった。キャリアを積んで力を付けてきた彼らの存在感は、ワールドカップ当時より遙かに上がっているだろうなあ。その他のメンバーがどれくらいやれるかで、結果が大きく変わりそう。コロナ問題などくすぶってるけど、やる以上は熱狂するような試合を見せてほしいし、勝ってほしい。男女とも期待できると思う。皆で応援だね。
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