練習生原稿Special「超速ジャンパーをマスターする」 Sugi Academy R6.12.6
ジャンプシュートに関するテーマである。正式な開校から約8年過ぎ、何とかここまでたどり着いた。極めて独自性の強いスキル、習得の難度だけでなく、理論の理解そのものが困難。それが「S.A.流超速ジャンパー QSJ(クイックストップジャンパー)」今までの概念とは異なるジャンプシュートなんだ。若い頃、チビの私がブロックをものともせずシュートしたいと心願し、苦労と工夫を重ねてたどり着いたシュート。むろん、整合する論理はあるが、バスケ界一般には「常識外」。正直教えられる対象生徒が出たとしても、数人だろうなあとずっと考えていた。しかし、最近のスクール生達のジャンパー系スキル上達には、目を見張るものがある。そして、少しばかり戸惑いながらも(特に、既存のジャンパーをどこかで学んでる男子)、生徒は私の言を信じ、皆が努力を続けている。「これなら……積年の夢が実現するかも」と思ったんだ。
言葉だけで解説してもおよそわかりにくい。だから、ブログには、動画・静止画をふんだんに入れ、見やすく構成した。だが、その説明前に、ジャンプシュート系の種類や特質を知っておいてほしい。ここが話の出発点となる。 *まずはジャンプシュートの全容を知ろう「空の王者……」 https://saschool-blog.com/?p=1070 ジャンパーの優位性は高いので、S.A.では女子も全員練習する。
要点1 ジャンパー(ジャンプシュート)とは何か?
膝を深く曲げて跳びやすい姿勢を作る。ボールも一緒に下げる(ディップという)。次に膝を伸ばしながらボールも持ち上げていきジャンプ、一旦頭上にボールを構えてからシュートが放たれる。基本的なジャンプシュートは、ジャンプの最高到達点に達してからボールがリリースされる。1回目のモーションでボールを頭の上に止めて構え、2回目のモーションでシュートを打つフォームなので、最近ではこれを「ツーモーション」と呼ぶことが多い。
ツーモーションのメリット
①シュートリズムを掴みやすい ②シュートが安定しやすい ③打点が高い ④キラーパスへの切り替えなどをしやすい。
ツーモーションのデメリット
①シュートの飛距離を出しにくい ②身体能力の影響を受けやすい ③シュートのリリースが遅い
ジャンプの頂上で止まるので、ボールが安定し視線も瞬間合わせられる。結果としてシュート率はよくなりやすい。しかし一方で、ジャンプの勢いは失われてしまう。だから、腕の力を中心にシュートが放たれるし、身体各部動きの連動性がないと実にぎこちないシュートになるんだ。つまり、身体能力の高さは1つの条件。当然、低身長、ジャンプ力不足、調整力の低い選手にとって不向きなシュートなんだ。女子は筋力的に男子より劣ることが多い。ジャンパーが女子に普及しにくい理由の1つともいえよう。そんなことは、練習法次第で解決するんだけどね。
要点2 ジャンピングシュートとは何か?
ジャンパーと同じように跳ぶのだが、ボールを途中で止めることなく一気にリリースまで持って行く。最高点に達したときにはボールがもう放たれてるイメージ。昔はよく、下手くそな選手がやるシュートと言われたね。でも現代型3Pシューターの多くは、これをやってる。時代は変わるもんだ。なお、優秀なNBAシューターは、ジャンパーと2つ使い分けてる場合があり、見た目じゃよくわからないかもしれないなあ。今風にはこれを「ワンモーション」と呼ぶ。
メリット・デメリットは、ツーモーションの真逆と考えればいい。止めない分リリースは早くなるが、鍛えられてないと思うほどの差は出にくい。
ジャンプの勢いを殺さずに下半身の反動をボールに加えるため、シュート距離を伸ばしやすい。中バス男子で3Pをよく打つのはこのタイプだね。カリーの50フィートショットなどもこれだ。ただし、下から一気に持ってきてる分、左右のブレ角度はどうしても大きくなりがち。素早いリズムゆえにシュートの成功確率は下がり易くなり、打点が低くブロックを合わされやすい面もある。
要点3 シュートラインの考え方
足先、膝、股関節、肩、肘、手首のラインを1本の線に揃えると、きれいなシュートラインができ、シュート率が上がりやすいという。つまり、右利きなら右つま先をやや前に出すボクサースタンス。ワンモーションではブレを防ぐため特に重要とされる。ジャンパー含め、昔から定着してるフォームだが、S.A.流 QSJではこれを否定し、スクエアスタンスを重要条件に入れている。個性的なフォームでも、名シューターは過去何人も存在した。昔ながらの決まり切ったフォームにこだわり続ける必要があるだろうか?最も大事なのは、対人でより有利なシュートを打てること、そしてシュートがより良く入る感覚を養うことにすぎないのだ。
QSJを理解するには、王道のジャンプシュート・ジャンピングシュートについて、長短を知らねばならない。「なぜ?」それはQSJが、それぞれの長所を上手く組み合わせたようなシュートだからである。ブン兄が時間かけて完成した価値がそこにあるんだ。20代後半から数年間、試行錯誤を繰り返し、たどり着いた結論には大いなるプライドを持っている。
退職数年後、「バスケ人生の集大成」としてこれまでの指導をまとめ始めた。丁度その頃、カリーの3Pシュートに出合った。いくつかの場面を見て気づいたのは、彼のシュートがQSJに酷似してた(そっくり)こと、これには驚いた(ただし状況に応じ、カリーは幾らか打ち方を変えてる)。あっと、誤解のないように言っておくが真似したのは彼の方だからね。早速、本原稿NO4として執筆にかかったのである。テーマは「驚異のクイックストップジャンパー ステフィン・カリーの秘密」A4版3枚の力作だ。
今回の解析では、多くのシュートが登場する。プロでは、カリー・コービー・アレン、いずれ劣らぬスコアラーだ。そしてS.A.生の R・H・Y・K、彼らもまた優れたシューターである。動画や説明文を存分見比べてほしい。
コービー・ブライアントのジャンパー「ツーモーション」である。ボールを頭上でしっかりセット、その後リリースされてるのがよくわかる。本動画では、ストップはスクエア、ボールのリフトは身体の中心線に沿って頭の真上辺りに持ち上げられた。ドリブルジャンパーとしては、S.A.のシュートセット方法と似通っている。
ジョーダンやレブロンも、ツーモーションタイプで打つことが多い。昔ながらの伝統的シュートといってよいだろう。
青14 スクール生K の3Pシュートを見よう。彼は中学2年、瞬発力があるが、この距離のジャンパーはまだきつい。動画でやってるのは「ワンモーション」シュート。右足が前に出て、ボールは止まることなく流れるように打っている。ワンモーションを推薦するわけじゃないが、ゲームにおいて3Pを要求される場面は出てくる。そこで、距離を伸ばしやすいワンモーションを許容してある。前述したシュートラインがほぼ一直線となっており、かなり綺麗なシュートだ。もちろんゴールした。
本来は、スクエアスタンスでのクイックシュートを意識し、ミドルレンジから、徐々に距離を伸ばし精度を上げてくのが望ましい。だが、いろんな条件のもと入校してくる生徒達、全員同様にとは行かない場合もある。重要な認識を間違わねば良い。
左はカリーのシュート場面。ストップ足を見ると、やや右足が前に出るボクサースタンスになっている。散々スクエアスタンスを推奨してきて、「何これ?」という話だが、既述のようにカリーのシュートフォームでは、結構多く出てくるパターンなんだ。シュート自体にやや余裕があり、ブロックを受けにくいと判断したときは、ゆったり気味に打ってるよ彼。このケースではDEFかなりデカめだけど、距離が空いてるからどうってことないでしょ。
今度は、赤DEFの距離が近く、しかもデカい。ゆっくり打ってたらブロックされそう。上の静止画とは明らかに状況が異なる。カリーの足を見よう、浅い膝の曲げでスクエアストップしてる。「早くて速い(タイミングとスピード)」ジャンプには、ストライドストップからのスクエアスタンスが最適なんだ。ところで話は変わるが、カリーのシュートってジャンパーだとみんな思ってるよね。だが、多くの専門家は「ジャンピングシュート」と評している。それが多数派だろう。ブン爺も強くは否定しないが……。
先ほど「カリー シュートの秘密」という原稿を、以前まとめたと言ったよな。事情があり、しばらくNBAやバスケ界から離れていた数年後、初めてカリーのシュートを見た瞬間、愕然とした(ひどく驚いた)んだ。その原稿中で、カリーのシュートを「限りなくジャンパーに近い」と爺さんは述べ、本心をいうと、今もその意見は変わらない。「上の動画のようにストップし打ったとき」かかとの離れ始めからつま先が離れるまでのごく短時間、ボールは額前にセットされてるというのが、ブン爺の見解なんだ。つまり、完全なワンモーションじゃない、もちろんツーモーションでもない。言うなれば「1.3モーション」ワンモーションとツーモーションの中間「1.5」より速いだろう。
ずいぶん細かくて難しいわ。QSJはスピードが命の技。0.05秒を争うくらいの意識が必要なんですって。シュート動作を瞬時に終え、それでもシュート率を落とさない「困難ながら理想的シュート」、ブンコーチはスモールだったけど180~190cmサイズの選手が覚えて使いこなせば、世界のビッグマンをやっつけられそうね。
カリーに破られはしたが、3P通算成功数でNBA歴代1位記録を持ってた本物シューター。教科書のような美しいシュートフォームでジャンパーを沈める。ツーモーションだが、ボールホールドからリリースまでの一連の動作が異常に速く、デカサイズでもブロックするのは極めて困難。こんな選手もいる、修練のたまもの。スクエアに近いストップと浅い膝の曲がり、リフトのタイミング、これが速さの秘訣だ。
ここからは、S.A.流 QSJ に関わる動画が続く。世界トップシューター2人の後ですまないが、スクール生Rのジャンパー、中学3年夏のものだ。よく見ると、相当速いモーションだとわかるだろう。女子のジャンパーなどまだまだ少ない。アレンのフォーム同様、鋭いストライドストップからスクエアスタンスとなり、浅い膝の曲がりでジャンプしている。またもう一つの観点は、ボールリフトの速さだ。両足が床に残ってるジャンプ開始時には、すでにボールが額斜め上にセットされている。そして跳躍直後の上昇力にうまく合わせ、ボールが更に持ち上げられリリースを迎えている。つまり、ツーモーションの欠点である「飛距離とリリースの遅さ」の解消。ジャンプの反動を失うことなく活用し、リフトのタイミングを早めることで、力の伝達を効率化するのがQSJの骨子なんだ。ワンモーションとツーモーションの中間くらいゆえ「高いシュート率」も得やすい。
右の動画、青4 Yを見てほしい。中学3年だ。入校1年未満でここまでやれたのは立派。跳躍力に優れるので、その気になればもっと高いジャンパー打てるのだが、敢えて跳躍を押さえ、リリースまでの時間を短くしている。究極のQSJ目指す考え方に近い。もちろん、ストライドストップで鋭く踏み込み、スクエアスタンスで速いジャンプを行っている。両かかとが浮き始めた頃には、既にボールは頭上へリフト完了。ジャンプの反動を遍く(隅々まで)ボールに伝えられるので、当然飛距離が伸びやすい。最近練習生の多くが、これに近いレベルまで上がってきた。ブン爺の楽しみはつきない。
こちらも中学3年 HのQSJだ。ゲームの中で決めたジャンパーの数は、Hがトップだ。Rの影響を受けつつ順調に上達、現在のスクール生全体のジャンパー練習意欲を牽引して(引っ張って)きた。動画のように、複数人相手でも何ら問題なくジャンパーを決める。このクイックネスにブロックを合わせるのは、サイズ差が顕著(明らか)じゃないとかなり困難。R6年代のジャンプシューター県NO1だろう(むろん、このシュートもゴール)。育成年代で目標とするQSJレベルにおいて、RやYと共に、ほぼ合格ラインに達したと言ってよい。
画像少しぼやけてるが、白10のシューターR、高校2年時のものだ。今まで多くのスクール生の好プレイを幾つも見てきたが、とりわけ驚いたのがこれだ。なぜかって? シュート位置見てほしい。女子の3Pジャンパーなんだ。僅かにライン踏んでるけどね。ただ……厳密にはこれ、ジャンピングシュート。でも、ブン爺が教えたんじゃない。いつもやってるQSJの距離を伸ばすため、自動的に身体が反応したんだろう。ファンダがしっかり積み重なってくれば(99%の努力)、「1%の閃き」を得ることができるという貴重な教えだね、凄いなあ。
最後はやはりこの人、カリー。デカいDEF(エンビードかな?)の接近、危険を感知したので凄まじく速いスクエアストップから、ストップジャンパーに入った。通常のワンモーションは、ボクサースタンスなので、ボール位置は顔前くらいから斜め前上方に向かいやすい。だがここでは、スクエアストップ①のケースよりもっと高くまでリフトされ、ごく僅かな時間だがセットされてる。スクール生達のジャンパーと最も似たシュートタイプであろう。
スクエアストップ①や②の動画場面こそ、10年ほど前にブン爺が見つけた「S.A.流 QSJとカリーの共通点」なんだ。そりゃあ、微妙な異なりはあるだろう。シュートフォームなんて、千差万別だしね。でも、もう10回動画再生し、コンパクトなストライドストップ・スクエアスタンス・浅めの膝の曲がり・ボールリフトの速さとセット位置・リリースまでのボール移動と力の伝達・リリースの方向・DEFサイズと距離感、これら全部を確認したい。
超一流のカリーと育成年代の選手では比べるべくもない。しかし彼らが、技術向上・身体作りに努力を惜しまねば、いつかは頂上に到達するだろう。そこではカリーが休憩してて、「よく来たね、君も超一流の仲間だ」と労ってくれるかもしれない。目指せ!1.3モーションジャンパー S.A.流 QSJ
ブンコーチはチビだから、シュートすぐブロックされちゃう。それで、ブロックされにくいDEFとの距離や打つスピードをすごく考えたんだって。もちろん、普通のジャンパーなんかほぼ通用しないじゃん。苦労したんだろうなあ……。20代中盤まではDEFに捉まりにくい距離中心だったけど、終盤からはとりわけ「シュートを打つ速さ」に思考が移ったんだって。チビが少しばかり高く飛んでも意味がない、どうせブロックに合う。それなら、「ブロックが間に合わないうちに打てばいい」という発想、これならDEFとの距離が近めでも通用する。でも、ジャンピングシュート(ワンモーション)に進む気持ちはなかった。勢いがつきすぎて飛距離の調節がやりづらいと、コーチは考えてたようだ。加減すればスピード落ちるしね。リリースポイントが少し前に出るのも嫌だった。そのような論理がQSJを生み出した要因らしい。身につけるまでにはかなり練習努力したみたいだなあ。おかげで、試合中デカいDEFに捉まることなく、3Pパカパカ入るようになった。そう言ってたよ、ブンコーチ。
日本人高校生でも、180cmサイズが当たり前の時代、190cmサイズだって増えた。しかし、世界的に見れば、日本人はまだスモール。世界の上位に食い込むには、いくつもの課題がある。QSJがその解決策の一つになるといいなあ。
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