練習生原稿 臨時号 「ドリブルの原点を見直す」 Sugi Academy R4.3.13
ゲームの中で発生した1:1の場面。「どうもすっきりと抜ききれない、こんな時はどうしたらいいのか」という質問があった。S.A.のドライブは、知ってのとおり非常に手強いDEFをやっつけるという手段に特化したものだ。だから、OFFのドライブコースをしっかり止めてくる上級者DEFを想定し作られている。余りスキルの高くないDEF相手なら、自己流であっても勝てちゃう可能性が大きい。ならば特別なドリルをするまでもなかろうという考えが根本にあるのだ。しかし、状況によっては、相手が大きくてまずまず付いてこれる場合やDEFが上手いわけじゃないけど走力があって、十分抜ききれない場合なども起こり得る。今回のケースはまさにそれ。コースまで入って止めにこれるのではないが、完全に抜かれもせず、横にくっついて追いかけてくるのだ。
1:1の勝敗は、大きく次の3パターン。
①完全に抜いてOFFが勝つ
②DEFが上手くてOFFのドライブコースを押さえる
③上2つの中間、抜けもしなければコースチェックまでもされない。 である。
現実には、もう少し微妙なケースがあるが、大まかには3つである。③のケースを図解すると左のようになる。見てのとおり、抜かれてはいない。しかし、コースを押さえてOFFを止めてるわけでもない。Sundayメンバーには、2回ほど教えた「アームバーDEF」に近いことがわかるだろう。
今回のケースでは、アームバーを使ったDEFをやってるわけじゃない。DEFはあまり上手くないのだが、脚力があるので、何とか付いてこれちゃってるのだ。こんなケースでは、S.A.ドライブをどう使えばいいのだろうか?結論言うと、このケースでは「瞬間抜き」は使えない。「え~っ、ダメじゃん、それじゃあ」と思っただろう。繰り返すが、瞬間抜きは上級DEFをやっつける技なんだ。付いてくるのがやっとなどという水準のDEFに使うものじゃない。しかし、③の場面だって十分起こりえるんだから、何とかせねばならない。この例のように偶然出来上がった場面だけでなく、「意識的にアームバーDEF」で、横を止めに来る選手だっているかもしれない。
では、「具体的にはどう対応すればいいのか?」。考え方は3通りある。1つは、スピードでぶっちぎること。抜けないかもしれないなどと弱気になるな。パワー勝負でDEFの壁を破壊するんだ。ドリブルの原点は、スピードにあり。最高のスピードを求める気持ちをないがしろにしたらいかん。だから、リトルの練習では、スピードドリブルをたくさんやってるだろ。町田瑠唯選手のドライブの強みは何といってもスピードにある。その上で、緩急や切返しテクニックが、非常にものをいうんだ。
スピードで抜ききれなくても大丈夫。弱気になって自分から逃げなければ、OFFは肩、DEFは胸なので、ドリブラーの方が強いでしょ。最後はレイアップ気味のシュートに行くことが出来るわ。でも少し難易度上がるから、同じような場面を作って、ドリブルやシュート練習しなくちゃね。
2つ目は、ロッカーステップやシザーズのようなフェイク系ドライブで、ドリブルスピードに変化をつけること。OFFには緩急が大事と言い続けてるよね。リターンドライブが機能することもある。キャリアが短いと、ゲーム場面でこれらのスキルを使うのは困難だろう。つまりスキルアップを図るしかない。
3つ目は、張り付いてるDEFから、外の方に離れて1:1の距離を取り直すことだ。そして、改めて1:1をやり直す。そうすれば、新たに瞬間抜きを使うチャンスも来るだろう。また、その際、応用編⑮Zチェンジのようなヘジテーション系ドライブを仕掛ける方法もある。既にドライブをしてるので、ゴールとの距離は縮まっている。それは、外角シュートが容易なことをも意味している。ジャンプシュートで仕留める方法もある。
③のようなDEFは、多くの場合、DEFがルーズである。ワンアームの距離で付くだけの力がないからだ。ということは、シュートを自在に打てるってことになるよね。しかし、トレーニングが足りないと、そのシュートが入らない。それでは打てても意味がない。だから、シュートの原稿で、1日最低でも100本は打ち込みなと書いておいた。忘るるべからず。
上級DEFには、いろんな対応法を駆使する選手がいるだろう。どんなパターンにでも対処できるスキルをつけねばならない。サイドマークDEFされたとき、抜けないことにイライラしてうっかりフロントチェンジしたり、逃げ腰になって何気なくドリブルを止めたりするのは最悪だ。
私は、S.A.のドライブに死角無しと思っている。但し、使いこなせたらの話だ。まだまだ時間はかかるであろう。切磋琢磨しよう。今回とてもよかったのは、困った問題点を放置せず、食らいついてきたこと。それは何より、上手くなりたいことの証。自分の非力を素直に認めることができるのは、上達への近道なのである。
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