バスケ配信  少し難しい、ドリブルチェンジ論

練習生原稿27「ドリブルの神秘と進化論」    Sugi Academy R1.11.24

ブンコーチ
ブンコーチ

今回は、過去から現在、現在から未来へと繋ぐドリブルの進化論である。S.A.のドライブドリルをやってる人、よく参観している保護者にはわかるだろうが、それ以外の方には少し難しいかもしれない。難しすぎなら、多少飛ばしてよい。でも、ドライブの中核をなす考え方でもあり、理解の必要性は感じる。後半登場のNBAハーダウェイに関する記述など、是非読んでほしい

S.Aで練習時間の多くをついやすドリブルスキル。私が若かった頃のNBAでも、目を見張るようなドライブはあったが、40年の間にかなりの進化がもたらされたといえるだろう。キラーパス(得点に直結するようなピンポイントパス)が大好きな私だが、現在のドライブスキルの多様性には脱帽だつぼう、その凄さを素直に認めるほかない。長きに渡り、変則的ドリブルを好んで指導してきたとはいえ、正直ここまでの発展・進化は予想できなかった。そこで今回は、現在スクールで教えているドリブルの仕組み・考え方の理論、さらに今後進化させる方向性などに関し、やや専門性が強くなることを承知の上、解説を進めてみたい。

まず、理解してほしいことは、体格の違い(腕の長さ・手の大きさ・足の長さ)があるだけで、同じスキル(例えばビハインド)を練習しても自然と差が出てくるという点だ。「そうかなあ~?」と思っても無理はない。理解しにくいところかもしれない。

ミニ用の5号球だと直径は22cm。身長125cmで股下またしたが57cm(標準くらい)の子がレッグスルーをやろうとすれば、ボールが通過する空間は30cm足らずだろう。(膝より上だと多分、ボールがはさまる)相当ピンポイントで狙わねば、ボールは抜けない。スーパー難しい。これが、180cm以上の大柄の人なら、股下空間が広くなるのでボールを抜くのが随分ずいぶんやりやすくなる。NBAプレイヤーはでかい奴が圧倒的に多いし、脚だけでなく腕の長さも半端はんぱじゃない。私の小さな手で持つと、7号球はやはり大きく感じるが、NBAの連中が持つと、まるでテニスボールみたいに扱うよね。(ちなみに、NBAでは6,5号球と称しているが、実質サイズは7号だ)そんな状態なのだから、ドリブル中の数㎝のボール移動力・ホールドの強さ・切り返しの精度に差が出るのは当たり前だろう。つまり、同じようなスキルを日本人、特に体格の小さな人や子どもが真似まねようと思っても、無理が出てくるのだ。そういう点まで配慮して指導法を選ばねば、十分な成果に結びつかないと、私は考えている。体格に恵まれた高校生以上の選手(厳密ではないが、目安として180cm以上)に指導する場合と小中学生の指導は、「一線をかくする(区別をはっきりする)」というのが私の論理なのである。(体格のいい人にはS.A.のドライブが不要というのでもない。スピードアップに有利な要素がたくさんある。)

だからといって、狙いやボールの扱いが極度に変わるわけではない。体格的不利を抱えていても無理なく実施できるよう手法を変化させ、合理的運用(無理のないやり方)を可能にしているだけだ。そういう視点で確立された指導システムが、現在S.A.で実施しているドライブドリルである。では、実際のドライブメニューを例に挙げ、細かな部分の考察を進めてみよう。

少し、NBAの話に触れよう。原稿のタイトルにも関係する内容だ。2000年代をトッププレイヤーとして駆け抜けたアレン・アイバーソン。フィラデルフィア中心に活躍し、シーズンMVP、得点王、オールスターMVPを受賞した。米スポーツチャンネル専用TVのESPNは、歴代シューティングGの5番手に選出している。(PGもできる。183cmは史上最小の得点王) 切れっ切れのクロスオーバードリブルは有名で、当時の若者達をとりこにした。だが、話したいのは彼のことではない。アレンが影響を受けたといわれるレジェンドがいる。「キラークロスオーバー」と異名を取ったティム・ハーダウェイだ。1990年代、特にゴールデンステートで活躍した選手である。  *クロスオーバードリブルとは、チェンジで方向が変えられたドリブルのこと。クロスステップと混同しないように。

183センチ79キロという体格。主にウォリアーズ時代、切れ味鋭いキラークロスオーバーを駆使くしして相手ディフェンス陣を崩壊。数多くの得点とアシストを残してきた。「分かっていても止められない」と言われるほど、左右への切り返しが素早く、電光石火のごとくリムへと向かっていった。現役にもクロスオーバードリブルの名手はいる。だが彼は、インタビューの中で、「歴代最高のクロスオーバーの使い手は?」という質問に、「疑う余地もない。俺のクロスオーバーは他の誰よりもすごい。誰がどう思っていようがね」と自信満々に切り返した。「ほかの選手たちはボールを持ち運んでいるだろ。でも俺はそうじゃない。俺は毎回、リムへ持ち込もうとトライしていたんだ。あれはすごくエナジーを消耗しょうもうしたものさ」と続けた。

彼が最も得意としたドリブルパターンは、「レッグスルー内抜きからのフロントチェンジ」であろう。常々言うように、内抜きではボールがやや後ろ方向に戻る。その状態からフロントチェンジするには、前脚がどうしても邪魔だ。だから、スクール「ドリブル神への道」の中に、このドライブパターンは入ってない。だが、巨人族にとっては、股下空間の広さゆえボールを横方向にたたくことが容易なので、割と前の方でボールをホールドできる。その分だけフロントチェンジをやりやすい。たった2回のチェンジで、NBAの大男達を手玉に取っていたのだ。ただ、一見何気なくやってるようだが、よく観察すると彼なりの工夫がわかる。いかに動作の無駄を省き、空きスペースを作るかという点で、S.Aのドライブと共通する部分が多いのだ。

「ドリブル神への道」の中には入ってない、ハーダウェイのキラークロスオーバーだが、実は、ハイスキルドリブルの1つとして存在している。生徒諸君には未公開のハイスキルドリブルが、瞬間抜きだけでなく、フェイク系・ヘジテーション系含めて、まだ50種類ほどあるのだ。いつの日かこの箱の封印が解かれ、ハイスキルが目の前に現れることを期待したい。キラークロスは、R3.8月現在、4人がドリル中

なお、ビハインドやロールの解説については、またの機会に譲るとしよう。 https://saschool-blog.com/?p=3048

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